理事長 鈴木 清隆

 1986年 11 月伊豆大島の三原山が大噴火し、全員、島からの避難を余儀なくされました。住民10,000 人の島からの脱出をたった 7 時間で完了させた全島避難の際、埠頭に残されたペット達がいた事を知る人 は 少ないでしょう。当時 18 歳で柴犬を 飼っていた私は、島に残され 悲しい 目 をした ペット達のニュースを見て自分事の様に心を痛めた記憶があります。そして 2000 年 9 月、今度は三宅島の雄山で大噴火が起き、全島避難となりました。この災害を題材にした飼主とペットの映画が 2011 年に上映され 、 噴火を乗り越えて立ち直っていく家族の姿は今でも目頭が熱くなる思いです。災害時、ペット と 飼い主は何ができるのか、 あの 埠頭 に 残された ペット と 飼い主の 様な 辛い 思い を させない為 、 本気で考えなければ大切な人たち を守れない と ペット防災を考えるきっかけとなり、 ペット 災害危機管理士 ® である 私 の 活動の原動力となっています。

 災害時のペット対策については大きな災害毎に必ず問題になって取り上げられていますが、一向に進まないのが現状です。それは一般飼い主の環境省ガイドラインに関する認知度の低さにあるのと同時に、行政のペット防災に関する取組姿勢の違いも挙げられます。そこで 全国 に いる 私たち の 仲間 は 、 一般飼い主さん向け防災セミナーをはじめとする環境省ガイドラインの啓発活動、行政からの依頼によるペット同行避難を伴う防災訓練の実施や助言、国や官公庁主催の防災イベントへの参加等、平常時に出来る準備やペット同行避難の実地訓練及び啓発を行ってきました。しかし、個 人の活動には限界があり、 使命を果たす事が難しくなって いました 。 その 現状を打開する為、個の活動を有機的に結び付け、点を線で結び面となる組織作りが急務となりました。

 ペット災害危機管理士® が今まで実践してきた活動や事業をさらに地域に定着させ、ペット飼養世帯を含め、被災者となる可能性がある全ての国民へ啓発を広げていくために全国規模で行政や関連団体との連携 を 実現できる 団体を立ち上げました。それが私たち特定非営利活動法人ペット災害危機管理士会です。「行政との絆」「企業との絆」「互近助との絆」「被災者との絆」「仲 間との絆」の 5 つの絆を活動信条に掲げ、災害時に一人も取り残さないペット防災を推進していく事をお約束します。

 ペット防災は特別なものでは無く、日常の延長線上にあると考えます。私たちは自助・共助・公助の促進として、平時より一般市民を対象としたペット防災講演やセミナー開催による啓発活動を行い、ペット災害危機管理士 ® 有資格者の資質向上を目指し、ボランティアリーダーの育成輩出、行政の避難訓練計画参加し、地域に根付いた防災活動を通しペット同行避難・避難所運営に参画する事により行政の負担を減少させます。このことは、災害時 の課題 の 1 つである 放浪犬猫の環境問題解決を推進する力に も 繋がります。また、多様化する社会情勢や災害毎に課題と検証が必要である環境省ガイドラインをより良い物に昇華させる為の改定案上程も行っていきます。将来的に全国 1,718 市町村の行政機関と伴に全世代に渡るペット防災の一元化の実現、ペット防災関連法の立案、災害に強いペット共生社会づくりに寄与することを目標に活動してまいります。